表層と深層の「ねじれ現象」

ユングという人は、無意識を個人的無意識層と集合的無意識層というように2つの層に分けました。ホロニカル・アプローチでも、“こころ”を多層多次元な顕れ方をすると考え、観察主体が内的世界を観察対象とした時には多層多次元な顕れ方すると考えています。

こうした観点からすると、現代日本人は、集合的無意識層レベルでは「東洋的なるもの」「日本的なるもの」という文化の影響を深く受けながらも、意識に近い表層レベルでは明治以降に積極的に取り入れられた欧米の文化を受けて育ってきたといえます。しかし多くの日本人の内的世界に、個を殺し所属集団を常に意識してきた生き方と、個を中心とした生き方をめぐる一種の「ねじれ現象」を引き起こして、アイデンティティーの混乱の源になってきたと思われます。

もし無意識の表層部と深層部との中間あたりに家族的・地域社会的無意識の層があるとすると、こうした中間領域が表層と深層の対立か統合かの修羅場となってきたといえます。

高度情報化の現代社会の変動は加速度的です。その結果、民族文化、宗教観や価値観の異なる異文化接触に伴う表層と深層の間をめぐるねじれ現象を一層激化させています。

ねじれ現象が、より統合的な方向に向かうならば、集合的無意識レベルと個人的意識の統合化を可能とした「個であることと、多文化的に生きるととが共存可能な生き方」を創出することになります。しかし、逆に、拡散・分裂の方向に一歩踏み出せば、世界は、混沌とし排他的な人々に満ち溢れることになると思われます。