対話は、説得でも交渉でもありません。説得は、主導権争いの中で、他方が他方に折れる行為といえます。交渉は、主導権争いの中で、双方が折り合い点を見つけあうような妥協行為です。それに対して対話は、共に変容するということを前提とした相互理解を促進する行為といえます。
特にホロニカル心理学がいう対話とは、共に変容しあうことで相互理解が促進され、対話するもの同士の縁起的包摂関係(ホロニカル関係)の実感と自覚を深めていくコミュニケーションのことです。
こうした対話のためには、①言語レベルでは完全に理解しあうことは困難かも知れないという不確実性への耐性力があること、②どっちが正しいと正当性を争うことを回避できる力があること、③異なる意見に際して、過度に防衛的になったり、批判的にならず、常に開かれた態度をとり続ける力があること、④終わりなき対話の中でも、共有可能なより一般的なるものが発見・創造される可能性に信頼をおけることなどが、倫理的規範として必要になってきます。
こうした条件が双方に成立しない時には、なかなか対話は成立せず、説得か、妥協か、決裂か、闘争かといった選択に絞られていきます。