二つの働き

“こころ”には、すべてを呑み込み、かつ産み出す、破壊と創造のエネルギーと、すべてを識別・分別しながら統合する理があり、両者が非一非異に働くところに生死の無常の全宇宙が展開すると考えられます。

ユング心理学では、前者にエロスの働きをみ、後者にロゴスの働きをみる傾向があります。また日本のユングの分析心理学の影響を受けた河合隼雄は、エロスの原理を母性原理が包む原理で解釈し、ロゴスを男性原理が切断の原理という観点(河合,1976)でから解釈し、日本人の深層における母性原理的強さを分析しました。

しかしホロニカル心理学では、こうした解釈自体は、ユングや河合隼雄の生きた家族文化や社会・歴史・文化的の影響を強く受けた集合的無意識レベルの色彩の強いジェンダー観(ホロニカル心理学的には、ホロニカル主体:理)が絡んだいたのではないかと考えるようになってきています。

すなわち、エロスの原理とか、母性原理とか、ロゴスの原理とか、男性原理とかの識別自体が、識別する自己の外我に内在化しているホロニカル主体(理)の影響であり、その影響を脱統合していくときには、こころ”の「エネルギー面」と「理の面」の双面性の働きがあきらかになるのではないかと思うようになってきたからです。恐らくこの双面的捉え方自体、文化・歴史の影響を受けており、正確には、もはや語ることのできない「非一非異」としか了解するしかないものといえます。

参考
河合隼雄(1976).母性社会日本の病理.中央公論社.

※ホロニカルマガジンの「カテゴリー一覧」の「閑談」では、ホロニカル心理学のパラダイムら生まれたエッセイを掲載しています。