“こころ”とは(41):色即是空

ホロニカル心理学では、において、すべての出来事が起滅していると考えています。場の性質は、色即是空です。一なる空が、即そのまま多層多次元にわたる現象を創り出していると考えられます。絶対無である空と重々無尽の世界が相矛盾しながら同一にあると考えられるのです。全宇宙は、無を含む絶対無(空)の場において有ると考えられるのです。

場は、絶対的なものです。絶対的なるものとは、それ自身によって自らを否定するものということです。もし絶対を否定する他のものがあったら、それは絶対的なるものとはいわれません。絶対的なるものとは、それ自身が自らを否定し、あらゆるものを否定しあらゆるものを創造するものでなければならないのです。

絶対無(空)自身が、絶対無(空)を自らを否定する働き(根源的な創造への意志ともいえる)があるが故、重々無尽の世界が忽然と開顕すると同時に、重々無尽の統一の世界が否定されることによって、一即多・多即一の世界が自発自展していると考えられるのです。

ホロニカル心理学では、“こころ”を色即是空の場そのものと考えます。自然界や意識界がおいてある場が、“こころ”と考えます。こうした捉え方は、もともと東洋思想にはありましたが、これまでの意識界と自然界を二元論的に区別してきた西洋思想の中で語られてきた意識というニュアンスをもつ従前の心理学の「心」の概念とは抜本的に異なります。

しかし、“こころ”は、すべてを物や身体とは別する意識、精神や魂のようなものだと唯心論的に語っているわけではありません。また、“こころ”の現象は、すべて物理的な作用と論じているわけでもありません。むしろ非二元論的立場をとっているのです。

絶対無(空)の場である“こころ”は、自らが抱く自己差異(ゆらぎ)によって自らを否定し、自己超越的に多層多次元の世界を創り出すと同時に、創り出した世界に再び自己差異を抱くという起滅を繰り返しているのです。こうした起滅によって、“こころ”のある部分は、ある部分以外の他の部分及び“こころ”の全体を、部分に包摂しようとし、また、“こころ”の全体も、“こころ”の他のあらゆる部分を包摂しようとすることによって、“こころ”の部分と全体が、ホロニカル関係を自ずと深めていると考えられるのです。