小さな統合と大きな統合

ホロニカル心理学の重要概念のひとつに自己組織化があります。適切な自己組織化は、無秩序と秩序が入り混じった混沌としている場所において、自己と世界の関係が、ホロニカル関係を自発自展的に形成しながら、新たな統合的秩序を組織化すると考えています(その反対は、無秩序化です)。

ある場所における自己組織化には、ミクロとマクロの二つの方向があると考えられます。

例えば、ある人Aさんがある場所にいます。しかもそのある場所は、無秩序と秩序が入り混じった混沌状況にあります。今、Aさんが生きる場所では、混沌とした悲惨な状況を少しでも秩序だったものにするためには、多少の犠牲者が出たとしても武力を使ってでもして強力に秩序化を図るべきという思想(α)と、そうした思想に真っ向から反対し、ひとりの犠牲者も出すことなく、民主的な対話を通じていく秩序化を図るべきだという思想(β)が激しく対立しあっています。しかもαとβの対立に戸惑うAさんの両極には、αを信奉する知人のBさんと、βを信奉するCさんがいます。

その後、Aさんの生きるある場所では、αとβの相矛盾のうちに、両者の統合化を可能とする新しいθ思想をもったあるミクロな存在としてのDさんが登場します。すると、Dさんの登場によって、次第にAさんの生きる場所においてもθ思想が場所的なマクロな変化として自己組織化されだしてきます。そしてBさんもCさんも少しずつθ思想を受け入れだしていきます。

このとき、個人の“こころ”内での統合化による自己組織化を「小さな統合」とするならば、個人を超えた場所における場所的“こころ”の統合化は「大きな統合」と考えられます。

現代社会では、「大きな統合」ではなく、極めてローカルな場所で、「小さな統合」が、散見されるようになってきた印象です。