一般と特殊の関係(4):心理学における特殊論と一般論の関係に関する考察

対人支援では、一見するところ特殊な出来事と思われている事例の中に含まれている他の事例との相似的なパターンなど、一般化可能な理を明らかにしていくことが大切です。また相似的パターンが発見される限りにおいて、ある個人に特有に見えた問題が、実は、多くの人にとっても通底する共有可能なテーマとして了解しあっていくことが重要です。たった一人の人の身に起きた出来事は、誰にとっても決して他人事ではないのです。

あるかけがえなき事例の特殊性ばかりを強調する研究では、学ぶべき価値が無限になり、学問としての一般性を失ってしまいます。といって、あまりに問題を一般化させすぎてしまうと、特殊のもつかけがえなき意味や価値から遠ざかってしまいます。

しかし、実はこの世界そのものが、常に特殊は一般を包摂し、一般は特殊を包摂し、特殊と一般は、ホロニカル関係(縁起的包摂関係)にあると考えられるので、そこに心理学の論理の基盤があると考えられます。