量子力学のもつ世界観の影響

現代物理学の最先端である量子力学が語る世界観は、多くの人が指摘するように、仏教的な「空」の世界や、華厳思想の一即多・多即一の世界観と極めて相似的です。しかし、カルロ・ロヴェッリ(2021)は、「量子力学は、超常現象や、代替医療や、不思議な波動や振動の影響などいっさい語っていない。」と指摘しています。

扱う対象の次元や層などやカテゴリーが異なるとき、量子力学の世界の論理を、そのままスピリチュアルな次元にまで適用することは危険です。

ただし、因果論的な古典物理学的パラダイムから新しいすべてが関係するパラダイムへとシフトし、その影響が、化学・生物学・工学ばかりでなく、哲学や倫理学に至るまで、大きなインパクトを与え続けていることは歴史的事実といえます。しかし、そうした影響があるとはいえ、「念じれば何事もその波動が相手の物や心身を動かす」と奇跡的なトーンで語ることはやはり危険です。

<参考>
カルロ・ロヴェッリ(2021).世界は「関係」でできている:美しくも過激な量子論.富永星訳。NHK出版.P160.