“こころ”とは(52):「エス」と「IT(それ)」の働き

一瞬・一瞬に過去と未来が包摂されています。

世界とは、本来、無自性・無分別・無差別の「意識と存在のゼロ・ポイント」(井筒俊彦)である絶対無(空)が一瞬・一瞬自己否定され、過去と未来を包摂しながら、「今・この一瞬」が非連続的に分化・多様化と統合化を繰り返しながら自発自展している出来事と考えられます。

「今・この一瞬」とは「永遠の今」のことです。

そして自己は、本来、無自性・無差別・無分節の絶対無(空)自身の分化・多様化と統合化の働きを内在化しながら絶対無(空)の分化・多様化の一要素として創造され、絶対無(空)自身の統合の働きに包摂されながら一生を終えると考えられます。

自己は、多層・多次元に分化・多様化する世界を自己に映し、その一切合切を自己自身に取り込みながら、自己と世界の関係を実感・自覚する自己の自己組織化を図りながら一生を終え、絶対無(空)になるわけです。

ホロニカル心理学では、分化・多様化の働きが「エス」であり、統合の働きを「IT(それ)」と考えています。

そして“こころ”とは、「エス」と「IT(それ)」の働きフィールド()と捉えており、本来無自性、絶対無、空の“こころ”が、「エス」と「IT(それ)」の働きによって、一瞬・一瞬、挙体性起的に多層多次元にわたるあらゆる部分と全体が縁起的包摂(ホロニカル)な世界を創りだしていると考えています。