自由無礙の俯瞰(19):固定的な観察主体と観察対象の関係の変容の促進

ホロニカル心理学がいう自由無礙の俯瞰とは、固定的な観察主体と観察対象の関係を変容させる行為です。一次元で物事を考えていても問題解決が見いだせない人には二次元で、二次元で物事を考えていても問題解決が見いだせない人には三次元で、三次元で物事を考えていても問題解決が見いだせない人には四次元で・・・といったように新しい問題解決の観点を創発することといえます。

相談室に、「早く死にたい」というのが口癖の40代の女性が来室しました。あるとき、面接中、「ただ死ぬ前に一度だけでもいいから氷河を見ておきたい」と呟きました。そこで金銭的問題で無理なのかどうか確認すると、「どうせ死ぬと思っているからお金を使うことは別にどうでもいいんです。でもエコノミー症候群なので、どうしても長い時間飛行機に乗っているのが無理なんです」と真面目にかつ憂鬱そうに語ります。そこで、<どうせ死ぬ前にお金を使うならば、足を伸ばせるファーストクラスで行かれたら>といいますと真顔になります。その後、女性は、エコノミークラスで、足の運動をしながらでも氷河を見にカナダまで見にいくことを決意します。そしてその後「行ってきました」と笑顔で来室し、次のように語ります。
「ガイドさんに、今、みなさんの前のこの一滴の水は、何万年も前にできた氷河がついに溶けた瞬間です」との説明を受けたとき、「ああ私の悩みはなんて小さいことか。もう死ぬなんでどうでもいいと思った」と気づいたとのことでした。まさに氷河の一滴が、彼女の人生を変えたのです。