社会的包摂能力(5):地域格差

同じような家庭状況にも関わらず、ある地域Aでは、子どもを家庭から分離して児童養護施設への入所などによって保護することになり、ある地域Bでは、在宅での要支援児童として踏みとどまることができるという差異があるという実態を無視してはなりません。

地域Aと地域Bで、同じような家庭状況にある子どもが、異なる処遇を受ける要因には、いくつかの要素が考えられます。

まず、地域Aと地域Bで、地域関係者の社会福祉の制度や政策に対する認識が歴史・文化的に異なることが考えられます。地域Aでは、地域社会はもはや無縁社会であり、児童養護施設を利用する方が子どもに望ましいと考えることが常識としているのに対して、地域Bでは、できるだけ地域内で地域関係者の包摂能力でもって子どものケアをすべきという歴史・文化が定着しているなど、地域社会の認識の差異があります。

地域Aと地域Bの行政の力関係や予算配分の差異も考えられます。地域Aでは、児童養護施設を運営するための予算や人員が充実している一方、地域Bでは在宅支援に割かれる予算が多いといった差異があります。これは、地域ごとに児童福祉行政に対するパラダイムと予算配分に対する姿勢が異なることが考えられます。