
過酷な事件、あるいは生死に関わる重大な事故や自然災害に遭遇し、その際に対処できず、ただ呆然と立ちすくむしかなかった記憶を鮮明に持っている人々が多く存在します。これらの外傷的な出来事の記憶は、自己の深層に刻まれ、あたかも後世の人々のために目撃者として記録しておくかのような記憶となります。しかしこの記憶は、多くの場合、外傷体験に伴う絶望的な感情や身体感覚を全体的自己から切り離す特徴があります。
しかし、切り離された感情や身体感覚は、何らかの要因で意図せず制御不能な形で出現し、生活上の支障をきたす症状や問題を形成します。こうした外傷性の記憶も、全体的自己に統合することが可能です。そのためには、「今・ここ」という安全かつ安心を体感できる支援の場において、外傷性の記憶を、被支援者と支援者が共創的俯瞰を通じて共有することが必要になります。
ホロニカル・アプローチでは、自己と世界の出あいの極限の不一致としての外傷的出来事を、被支援者と支援者が適切な心的距離を持った視点から共に俯瞰し、共有していくことを重視します。被支援者と支援者が苦悩を共にしながら、その出来事の共同目撃者となるのです。その上で、被支援者が生き延びるため無意識のうちに取った解離的俯瞰を、支援の場で、被支援者が耐え忍び生き抜いた勇者として、慈悲深い共創的俯瞰によって包摂することが、阻害されていた適切な自己の自己組織化を可能にします。