場面再現法(2)

場面再現法

場面再現法では、まず被支援者がモヤモヤしていたり、自己不全感など自己不一致を感じている出来事に焦点化します。抽象的なテーマに対しては、もっとも不一致感をもたらしている具体的な出来事の場面を支援者が絞り込んでいきます。映画でいえば、ある場面のある瞬間の一コマレベルまでの絞り込みです。ホロニカル心理学では、一瞬にすべてが織り込まれていると考えるからです。

絞り込みができたら、具体的場面を映画で再現するかのように小物などを積極的に使いながら不一致の瞬間の場面を外在化し、被支援者と支援者が共同研究的に自由無礙に俯瞰できるように可視化します。

被支援者と支援者の間に信頼と安心の絆ができていればいるほど、苛酷な場面の再現も可能になります。しかしながら場面再現が、過去のおぞましい時を想起するばかりで、「今・ここ」における被支援者の安全感・安心感が脅かされたり、適切な観察ポジションを維持できなくなる場合は、再現は中断、保留または停止します。

被支援者自身が不一致を実感した瞬間の直接体験の場面が、ほどよい心的距離をもって再現できたら、その瞬間の体験時の内我の実感及び外我の認識をさらにゆっくりと明らかにしていきます。不一致感は、内我と外我を巡る自己照合システムの不一致によってもたらされています。そのため不一致のある場面に焦点化していくと、ある出来事をめぐる観察主体と観察対象の関係や外我と内我の関係の不一致が、陰性感情を随伴する部分対象を視野狭窄的に創りだし、観察主体が、常に陰性の部分対象ばかりに拘泥し近視眼的に執着していることが顕在化してきます。しかも、視野狭窄的執着が頑固なほど、観察主体と観察対象の関係や外我と内我の関係の不一致の自己照合システムは、多層多次元にわたる不適切なフラクタル構造を形成していることも明確化してきます。

そこで被支援者と支援者は、そうした不一致をつくりだしている観察主体と観察対象の関係や外我と内我の関係そのものを共同研究的協働関係の中で、自由無礙に俯瞰しながら、あるがままにすべての現象を受容していきます。被支援者の不一致の実感と自覚に支援者が一致していくわけです。すると被支援者の観察主体と観察対象(自己及び世界)との不一致が、被支援者と支援者の縁起的包摂関係の中で包摂することが可能になってきます。不一致と一致の絶対的矛盾をあるがままに被支援者と支援者関係の場の中で包摂することができるようになります。この体験自体が、自己と世界の一致のホロニカル体験を被支援者と支援者にもたらします。

するとその後は、ホロニカル体験を求めるように、被支援者と支援者の間の不一致・一致の関係がより一致に向かうようになりはじめ、いずれホロニカル体験を基盤にして被支援者の観察主体と観察対象(自己と世界)の関係はより一致する方向に向かって自発自展しはじめ、被支援者は新たな人生を発見・創造することが可能になっていきます。