自己実感しているところを直観的に覚知していくことが自覚」です。自覚には、自覚の有無、自覚の様相や、自覚の程度(浅さ・深さ)など、自己意識の発達段階の差異が深く関係します。しかも自覚の差異が、「自己」や「世界」及び、「自己と世界の関係」についての感覚の差異を人にもたらします。

ホロニカル心理学では、世界が自己を通して世界自身を自覚するために、自己意識を発達させてきたのではないかという仮説をもっています。

自己意識の発達は進化するという考え方がありますが、ホロニカル心理学では、自己意識は進化ではなく深化に向かって発達してきたと考えています。自己意識の発達には、確かに認知の進化が影響していると考えられます。そして認知において人間は、他の動植物より進化してきたといえます。しかしこの認知の進化は、自己と世界をより深く知るための自覚のための進化と考えられるのです。進化の概念は深化の概念に包摂されるのです。

適切な自己意識の自己組織化は、実は、自覚の有無に関係なく可能です。その例を亀に見い出すことができます。

私は亀が好きです。じっとしている亀を見ていると、まるですべてを悟っているかのように見えるからです。じーっと石のごとく動かず、今・この場にたたずんでいたかと思えば、腹が減ると、そろりと動きだし、すっと池に飛び込み泳ぎ、そして今度は獰猛な顔つきで餌を食い、そして腹がいっぱいになると、再び石の上に登り、そして微動たりともせず、そこにたたずむことができるのです。すべてがあるがままに生きているように見えます。亀を見ていると、私たち人間の方がいかに煩悩だらけかと思い知らされるのです。しかも100年以上も生きた亀がいるなどと聞かされたものならば、ああ、私たちなんかより亀の方が長生きする智慧をもった存在として賢いのだと、嫉妬心すら湧いてくるのです。

しかしあるとき、気づきました。亀自身は、悟った状態にあることを、我々人間のようには自覚していないだろうということに・・・。亀と私たち人間との間には、認知の進化による自覚の深さの差があるのです。煩悩だらけの人間は、亀など自然物から自覚という一点において深化したといえるようです。