実在(6):自己自身を含む世界

私たちは、自己の存在を抜きにした世界が、客観的世界として実在すると思いがちです。しかし私たちにとって意味をもっている実在する世界とは、常に自己を含む世界のことです。自己抜きの世界は、自己の主観(現実主体の認識による主観)に写された観察対象としての世界であって、知的自己が抽象的に仮説的に想定している世界に過ぎません。誰もが自己を抜きにした世界など経験できないのです。

自己があるところに世界が実感・自覚され、世界があるところに自己が実在するのです。実在する世界とは、必ず自己自身を含む世界といえるのです。

主観は、実在する世界の外に出ることはできず、自己にとって実在する世界とは主観と客観とが包摂された世界のことです。

主観と客観が相対立しながらもコインの表裏の如く一体となって自己と世界を統一する力が働いている世界が実在する世界といえるのです。

それでは自己や世界とは何かということになりますが、自己も世界もその根底においては同じ絶対無(空)から創造されたものであり、根源的には同一であり、自己を知るとは世界を知ることであり、世界を知るとは自己を知ることといえます。