A点固着

ホロニカル・アプローチABCモデルにおいて、A点に固着状態しているクライエントをクライエント自身がいかに評価しているか、また評価された自己は、どのように自己のことを認識し、いかなる気分になっているかを、共創的俯瞰のC点からクライエントの不適切な観察主体と観察対象の関係から見直す作業が大切です。

このときクライエントがA点固着状態の自己自身を不適切な観察主体から観察対象としているときの自己違和感な気分と、支援者と共にA点固着状態にある自己自身を俯瞰するときに抱くこれまで明らかにならなかった自己と世界の出あい不一致の累積により形成された中核な気分との間には明らかに違いがあります。

後者は、クライエントは安全かつ安心して表出することのできなかった情動や感情です。自己が自己と世界の不一致の累積の中で抱き続けてきた他の誰にも犯すことのできない自己自身の体験を十全に自分のものとして、自己防衛を図る必要もなく、解放することができたときの情動や感情です。前者は自己違和的な気分が随伴していますが、後者は自己親和的な純粋で偽りなき気分が随伴しています。

前者は心的エネルギーが自己の底に向かって鬱屈していき、どこまで底にいっても自己違和的陰性感情が沈澱していくばかりですが、後者は自己親和的な陽性感情が自己外に向かって解放されていきます。

こうした両者の差異の明確化を図ることが、その後のクライエントの適切な自己の自己組織化の促進にために大切な作業となるのです。