自己と世界(14):自己と世界のせめぎあい

世界から「創造された創造的要素」(西田,1938)としての自己は、一切合切の矛盾・対立を、瞬間・瞬間、自己自身に映し、それをできるだけ全一的世界の分化・発展として統合的に受け取れるようにと、自己または万物からなる世界に働きかけようとします。

世界も、また、万物同士によってひきおこされる一切合切の矛盾・対立を、瞬間・瞬間そのときの世界自身に映し、それをできるだけ全一的世界の分化・発展として統合しようと万物に働きかけます。

こうして全一的世界の多であり部分である自己は、全一的世界を自己内に包摂しようとし、全一的世界もまた部分としての多の自己を全一的世界に包摂しようとして、自己と世界はせめぎ合います。こうした自己と世界のせめぎ合いの場所が、自己にとってはこの世といえます。

参考文献:西田幾多郎(1938).人間的存在 .in:西田幾多郎全集第9巻,1949.岩波書店,p9.