「IT(それ)」(33):全総覧と統合化の促進

適切な自己及び世界の自己組織化のためには、一切合切を全総覧し、かつ森羅万象の統合化を促進する「IT(それ)」の働きが必要です。

「IT(それ)」の働きの意識化は、人間の自己の一部であるの意識を通して可能です。しかし人間は、「IT(それ)」の働きを実感しながらも、自己がかけがえなき固有の我として生きようとする限り、自己と世界の不一致の対立を避けられず、我は、「IT(それ)」の働きとも不一致となり対立します。我は、「IT(それ)」の働きに逆らうといえます。その結果、自己にとって我との「IT(それ)」との対立は、自己の欠陥、無力感や罪深さを実感・自覚させます。しかし、「IT(それ)」は、そうした我を含む自己を包摂する働きを有しています。

自己は創造的世界の一要素として、多様な個物の一として創造されますが、自己が我として生きようとする限り、自己の個性化の歩みは世界との不一致や対立を避けることができません。しかも対立・不一致がなくては、我には自己が世界に呑み込まれ自己の境界を失う不安がつきまとってしまいます。しかし、自己は我が無我となっても自己であることには変わりがありません。したがって生きているかぎり自己は、無我となって自己と世界が無境界になっても、むしろ自己=世界でもあることを直覚するだけといえます。

もともと自己と世界の関係は、両者は絶対的に矛盾する対立関係にありながら同一にあるのです。