
私たちは、目の前の出来事や周囲の世界だけでなく、自分自身の思いや感じ方を見つめることもできます。つまり人間には、外の世界を対象として捉える働きと、自分自身を対象として見つめる働きの両方があります。
この働きによって、私たちは外側に広がる世界を「外的世界」として捉え、同時に、自分の内側に生じる思いや感情の世界を「内的世界」として捉えているわけです。
そして人間の場合、ただ何かを感じたり考えたりするだけではなく、「いま自分がこう感じている」「いまこう考えている」と、その体験そのものを見つめ直す内省力や自覚する力があります。さらにいえば、自覚の内には、自分と世界とがぶつかり合い不一致になっていると感じる瞬間も、自己と世界が融即し一致の関係となって無境界となる瞬間(ホロニカル体験)もあります。
ホロニカル心理学でいう「自由無碍の俯瞰」とは、観察主体と観察対象との関係を固定せず、自在に行き来しながら、その全体を無批判・無評価・無解釈の立場から実感・自覚していく働きを意味します。
それは、ただ自分を振り返るということにとどまりません。自分を見つめながら、なおその自分に閉じこもらず、より広い視野から自分と世界との関係全体を見渡していくことにつながっていきます。
その意味では、ホロニカル心理学でいう「自由無碍の俯瞰」とは、観察主体と観察対象との不一致と一致の双方を含み込みつつ、その生成的関係全体を見渡す高次の観察作用です。それは、単なる自己内省ではなく、自己と世界との関係の動態そのものを対象化しうる「自己超越的な働き」といえます。