頑固な心的問題(症状)

大文字焼き

自己と世界の不一致を避けることはできません。むしろ自己と世界の不一致と一致の生成消滅のこそが、自己にとっては自己と世界の存在を実感する原点であり、意識と存在の誕生の場ともなります。こうした場は、まずただあるがままに受け止めるしかなく、あるがままに受け取れるようになることが自己にとっては重要となります。とはいえ、不一致が避けられないだけに、自己にとっては自己と世界の一致が理想となります。

そこで自己にとっては、自己と世界の不一致の直接体験をどのように自己自身に意味づけていくかが自己の生存をかけた重要テーマとなります。

健康な自己とは、自己と世界の不一致・一致の繰り返しの中で自己と世界がより一致する方向に向かって自己が自ずと自己組織化している状態のことといえます。逆に、自己と世界がより一致する方向への自己組織化に行き詰まると、自己は様々な心的問題(症状)を抱え込むことになるわけです。

適切な自己組織化の道を歩むか、自己組織化が停滞・退化・解体するかの分岐点は、不一致時に自己がいかなる自己照合システムを構築していくかにかかっています。自己照合システムとは、不一致・一致の繰り返しの中で、ある気分を随伴しながら非連続的に生成消滅する直接体験の断片同士を、自己自身がどのように受け止めどのように解釈し意味づけていくかを瞬間・瞬間決定しています。自己は、複雑で変化の激しい文脈に応じるために、もっとも合理的で柔軟性のある効率的な自己言及的システムを形成することで、自己と世界が統合性と一貫性をもったものになるように、その都度その都度自己と世界を構成し続けているわけです。また気分ごとに形成される自己照合システム同士が、より高次な自己照合ネットワーク・システムを形成していくことによって、より複雑な感情や情緒を伴った認識や思考の枠組みを形成していきます。その結果、もっとも効率的な自己(直接体験)、現実主体(我)ホロニカル主体(理)の関係を形成していくわけです。こうした情報処理のシステム化やネットワーク化は、神経・生理学的なネットワーク化が深く関係しています。

頑固な心的症状や問題とは、観察主体と観察対象の関係を決定している自己照合システムの統合的ネットワーク化の失敗の累積であり、自己が機能不全を起こしている自己照合システムにいつまでも拘泥・執着する状態といえるのです。

そこでホロニカル・アプローチでは、視野狭窄的となり悪循環パターンから抜け出せなくなっている観察主体と観察対象の関係を、別の新たな俯瞰的枠組みから見直すことによって、自己と世界が一致する方向に向かうことを可能とする新たな自己照合システムの再構築を促進し、新たな察主体と観察対象の関係を発見・創造しようとするわけです。