今・この一瞬

 

素粒子の軌跡

ホロニカル心理学では、一瞬・一瞬を重視します。「今・この一瞬」こそが、確実なリアリティと考えられます。過去も未来もなく、過去も未来も包摂する実在する「永遠の今」が「今・この瞬間」です。

「今・この一瞬」は、一瞬たりとも同じ出来事などなく、無常です。瞬時・瞬時に、すべてが相互包摂的関係を形成しながら、歴史的世界を不断に創造しているのが、「今・この一瞬」です。

自己の意識が今このときを忘れ、過去への後悔や未来への不安にとらわれている限り、「今・この瞬間」は自己と世界は断絶し、自己は「今この一瞬」の全体験に触れることはできません。

実際、私たちは、ほとんど「今・この一瞬」には生きておらず、過去の記憶や未来の予測という時間の流れに囚われた生き方をしています。しかし、そんな日常生活にあっても、内的世界と外的世界が触れあっている「今・ここ」に覚醒すれば、誰でも過去も未来も包摂する「今・この一瞬」に生き返ることができます。こうした生き方は、過去や未来を無視をして刹那的に生きるのとは真逆です。過去を含み未来がそこから生まれてくる「今・この一瞬・一瞬」を真剣に生きるという意味です。道元の「而今(じこん)」の「今・この一瞬」です。

私たちは、今この一瞬のリアリティをすぐ忘れ、過去や未來に“こころ”を奪われててしまうといえるのです。「今・この一瞬」のリアリティを失った瞬間、煩悩に翻弄される苦の世界に迷い込んでしまうと考えられるのです。