
ホロニカル心理学は、さまざまな心的現象を、個人の内部だけに生じるものではなく、自己と世界との関係において立ち顕れる「場の出来事」として捉えます。
この立場から見ると、心理社会的支援における「リカバリー」とは、単に症状が改善したり、以前の状態に戻ったりすることではありません。これまでの生きづらさを契機として、自己と世界との新たな関係を発見・創造しながら、より生きやすい人生へと歩みはじめる動的なプロセスとして理解することができます。
自己と世界との不一致による自己違和的な体験が繰り返し累積すると、人は自らを守るための自己防衛的なあり方に偏らざるを得なくなることがあります。その結果、それまで開かれていた人や社会とのつながりが狭まり、出来事の意味づけや人生の選択肢も固定化し、人生そのものの生成の流れが滞っていきます。いわば、これまでとは異なる人生の物語を紡ぎ出すことが難しくなっている状態です。
しかし、リカバリーの過程では、こうして滞っていた自己と世界との関係が、再び少しずつ動きはじめます。安心できる人との出あい、新しい出来事との出あい、これまでとは異なる自己自身との出あいなどを通して、身体感覚がほぐれ、物事の受け止め方に柔軟性が生まれ、人や社会との関係にも新たな可能性が開かれていきます。
それは、単に「元の自分を取り戻す」ことではありません。むしろ、それまでの生きづらさをも包摂しながら、これまでとは異なる自己と世界との関係が生成され、人生そのものが再び動きはじめることです。したがって、ホロニカル心理学から見たリカバリーとは、「場の再生」あるいは「生成の再開」ともいうことができます。
そこでは、症状がなくなることだけが中心的な目標になるわけではありません。たとえ何らかの症状や生きづらさが残っていたとしても、その人と世界との関係が変化し、新しい出来事や意味が生まれ、より生きやすい人生の道が開かれていくことに重要な意味があります。
それは、出口の見えない自己防衛を中心とした自己から、関係のなかで生成し続ける自己へ、病気によって規定された自己像から、生きてきた経験を包摂しながら新たな物語を紡いでいく自己へ、固定化されたアイデンティティから、出あいとともに変化し続ける流動的なアイデンティティへ、という変容でもあります。
リカバリーとは、病気になる以前の地点へ戻ることではありません。生きづらさをも自らの人生の一部として包摂しながら、自己と世界との新たな関係を一瞬・一瞬生成し、より生きやすい人生を発見・創造していくこと。
それが、ホロニカル心理学から見たリカバリーです。