
ホロニカル心理学でいう「直接体験」とは、まだ言葉になる前の、自己と世界が出あうその瞬間の体験を指します。そこでは、自己と世界がぴたりと重なる感じも、どこかずれている感じも、説明される前の生きた感覚として立ち顕れてきます。つまり直接体験とは、自己が自己を感じ取りながら、自己と世界との関係のなかで、そのつど新しく生まれていく動きそのものだといえます。
直接体験は、「今・ここ」に起きている出来事ですが、その中には過去の歩みも、これから先への開かれも含まれています。ただし、それは単純に過去から未来へ一直線に流れていくものではありません。むしろ、一瞬・一瞬に自己と世界との関係が新たに生まれ、そのたびに、その瞬間にしかない固有の体験が生じています。同じ自分、同じ世界のように思えても、まったく同じ出あいは二度とありません。
だからこそ、直接体験は、一瞬・一瞬が別々であるようでいて、どこかでつながっている不思議な流れをもっています。ひとつひとつの瞬間は新しく生まれながらも、自己の歴史を抱え、次の瞬間へとひらかれていきます。直接体験とは、そのように、自己と世界との出あいが絶えず生成し続ける、生きた“こころ”の出来事といえるのです。
ホロニカル心理学は,このような直接体験から心理学を脱構築する試みといえます。